施術部の伊藤です。いつもスタッフブログをお読みいただきありがとうございます。
数日前、私がひめさゆりに入社して初めて担当させていただいたMさんが永眠されました。Mさんは、廃用症候群で寝た切りの患者さんでした。
昨年、ご家族さんから、主治医より看取りの告知をされたことを伺ったので、いずれこの時が来ることは覚悟していましたが、初めての患者さんだったので、色々な思いが込み上げ、涙が溢れて止まりませんでした。感謝と敬意を表し、Mさんとの印象深い思い出を綴ります。
Mさんは、無料体験マッサージの顔合せから印象深い思い出があります。体験マッサージを終了した後、患者さんと家族にマッサージの希望回数を伺うのですが、この時のMさんは、「毎日!!」と言ってくださり、驚きと共に、とても嬉しかったことを、今でも鮮明に覚えています。
施術開始当初、Mさんのことを知るために、趣味や好きなことは何か伺いました。そうしたら「社交ダンス!」と答えてくださり、思わぬ返答にとても驚きました。私はMさんに、生きる希望を捨てずに元気に長生きして欲しくて、「元気になったら、また社交ダンスやって欲しいです。」と言ったら、「教えてやっから!(教えてあげるから)」と言ってくださり、意欲的なMさんの姿が嬉しかったです。
また、Mさんは自力で体を動かすことが出来なかったのですが、介護をしていたご家族さんから、唯一自力で動かすことが出来る右手を使って、自力で飲み物を飲めるようになって欲しいとご希望があり、施術に加え、右手の握力を付けるための機能訓練を開始しました。手の平サイズのボールを10回握る機能訓練を行い、毎回一生懸命取り組んでくださっていました。一時期は、訪問日以外でも訓練が出来るようにボールをお貸しして宿題を出し、訓練に励んでくださっていたこともありました。
そして、一番嬉しかった思い出が、自力で身体を動かせなかったMさんが、右下肢を少し動かすことが出来たことです。ご家族さんから初めてそのことを伺った時は、本当に嬉しかったです。その後、私たちが訪問した時にも、右の足を動かせたことが2~3度ほどありました。本当に素晴らしかったです。
それから、可愛らしい思い出もあります。Mさんは『かっぱえびせん』が大好きだったのですが、調子がいい時は、ご家族さんに「えびせん。えびせん。」と言って口にかっぱえびせんを入れてもらい、カリカリといい音を立てて食べていました。それが微笑ましくて、私たちも思わず笑顔になったものです。
また、Mさんは寂しがりなところもあり、施術中に「手、握って。」と言ったり、終了後に挨拶をすると、「嫌だ。嫌だ。行かないで。」と言ってくださったことが何度もありました。
そして最後に、Mさんの尊敬に値する素晴らしさ。それは、最後の最後まで『生きること』を諦めなかったことです。
昨年、主治医から看取りの告知をされた後も、施術中に何度も「水。水。」と言って、飲み込む力が弱くなっても、水分を摂取することをやめませんでした。その姿からは、Mさんの「生きたい!」という強い思いが伝わってくるようでした。
更にその思いの強さを感じたのは、先月の11日、主治医から絶食を命じられ、点滴のみになったのですが、点滴だけで、約1ヶ月と10日も生き抜いたのです。主治医の看取りの見立てよりも、半年以上長生きされたと思います。Mさんは、本当によく頑張りました。どんなにつらいことがあっても、生きることを諦めず、精一杯生き抜いた、命の大切さを教えてくださったMさんに、心から感謝と敬意を捧げます。
Mさんのご冥福を、心からお祈り致します。Mさん、私たちと出会ってくださったこと、本当にありがとうございました。どうぞ安らかにお眠りください……。
大切な時間を使い、最後まで読んでくださる皆さん、いつも本当にありがとうございます。