施術部の伊藤です。
先日あった、私にとって学びになった出来事です。
認知症が進んできている施設入所のYさんが、体の調子を確認した時に、3月末ぐらいから左下肢の痛みがあるとのことで、そのことをずっと訴えていました。しかし、右下肢を手術してプレートが入っていること、本人から足のマッサージはしなくてもいいと訴えがあった経緯があり、下肢の施術は現在はしていないと院長から聞いていたので、私も下肢の施術はしていませんでした。
そんな状態で4月に入り、毎回「左脚が痛いです、今朝は左脚が痛くて、トイレに行くのにも痛くて歩くのがやっとで、4月が終わるまではいつもこうなるから仕方ないね…。」など声が本当に辛そうで、私も毎回胸が痛んでいました。何とかならないかと考え、「そういえば、プレートが入っているのは右脚で痛いのは左脚なんだから、左脚は施術しても大丈夫なのではないか?」と思い、院長に左下肢の施術は可能なのかを確認したら、左は大丈夫と許可が出たので、まずはホッとしました。後はYさんに確認をして、本人が左脚の施術を希望したら行うという院長の指示に従い、先週の訪問の日にYさんに「左脚のマッサージもしてみますか?」と確認をしたのですが、Yさんは痛みに耐えながら「やらなくていいです。」と答えたので、複雑でしたが、Yさんの意思を尊重して施術は行いませんでした。
しかし、今週最初の訪問に伺うと、娘さんに連れられて病院に行かれたとのことで、間もなく病院から戻ってくるという状況でした。程なくして戻られたので、娘さんとお話しさせていただいた結果、「今日はブロック注射をしているのでお休みさせてください。」ということだったのですが、「次回は左脚のマッサージをお願いします。」と娘さんの思いも直接確認出来たので安堵しました。
そしていよいよ二日後の訪問の日。Yさんのお部屋を伺うと珍しくかなりテンションが高く、「ひめさゆりさんですか?あのこと(左膝のマッサージの件)は聞いてる?」と話され、娘さんから伺っていることを伝えると、「良かった!じゃ、お願いします。」と、安心したように喜ばれていました。はじめてのことですが、Yさんが私のところまで来てくださり、私の手を取って「ここが膝のところに掛けて痛いんです。」と、左大腿部の外側と内側を触らせて教えてくださいました。外側内側共に強い筋緊張が見られました。ベッドの案も出ましたが、まずは試しに椅子に座って状態確認させてもらい、その状態でも大丈夫そうだったので椅子で施術を行いました。
施術をしながら、「週に2回ぐらいは出来ますか?」と何度か質問があり、元々週に2回で行っているので「大丈夫です。」と伝えると、「じゃ、良かった。時間は何時頃になりますか?」と、日時は今までと同じなのですが、認知症の症状が進んできていることもあり訪問の時間は忘れている様子した。でもそれ以上に、辛いところが楽になっていくのが嬉しい!という思いが伝わってきました。続けてYさんは、「本当は足のマッサージやってもらおうと思ったことは何度かあるんですけど、悪いと思って言わなかったんです。」と、本音を言ってくださったのが嬉しかったです。Yさんはとても努力の人で、辛抱強い方なので、本当はやって欲しいと思っていたということが聞けて、グッとくるものがありました。また、施術は椅子で行なったので、私は薄いマットに膝を付いて行っていたのですが、Yさんが「座布団用意していなくて申し訳ないです。今度娘に持ってきてもらって用意しますから。」と気に掛けてくださり、その優しさに胸が打たれました。
施術後、左大腿部の筋緊張が大分ほぐれ、「あ、痛みが楽になった!脚が上がった!」と、大腿部を4cm前後上げ下げしながら大変喜ばれていました。大分痛みが軽減したようで、「いやぁ!良かったぁ!!これからもよろしくお願いします!」と、今までに見たことがないくらいの喜びようで、大変明るい笑顔をされていました。挨拶をして私たちが部屋から出た後、更に歓喜の声が聞こえました。今までで一番嬉しそうな明るい歓喜の声を上げていたYさん。Yさんが苦しみから解放されたことが、私も凄く嬉しかったです。そして、これが本当の「心からの喜び」なんだと実感しました。
今回の経験で、「患者さんの本当の心の喜びは何か。本当の慈愛の追求は何か。」を深掘りするきっかけをいただくことが出来ました。Yさんのお陰です。本当にありがとうございます。
こうして皆さんから育てていただき、成長できていることを社会貢献に生かし恩返ししていきます。
いつも大切な時間を使い最後まで読んでくださる皆さん、いつも本当にありがとうございます。